体験談   きくちそう

「くぐるっていうか、開く?通り抜ける?何て言うのかな。鍵とか特にかかってなくて、例えば、家主が上から手をのばして閂を外せる感じのタイプなんだけど。わかる?一戸建ての、開けた住宅地のイメージかな。ちょうど友達の中でも裕福な方にはいりそうな奴の家の玄関の。そうそう、肩くらいの高さの白い塀があって、門自体は少し低いの。大人の胸の位置くらい。黒くて、アルミかなぁ。軽そうだし。閂がカシカシ言うよね。あまり気持ちの良い音ではないね。そう、あれがあったら犬とかは飛び出ないと思う。アプローチっていうのかな、敷石とかはあまりなくてすぐ門からすぐ玄関なんだけど、二段くらいの階段があってね。あれなら子供も飛び出さないし、やっぱり必要かな。防犯?純粋に防犯のための門じゃないんじゃないかな多分。元々は防犯の意味も大きかっただろうけどね。テリトリーというかさ。門があるだけでちょっと緊張するんじゃない?うん、家の門の話はいいや。門の向こう?門の向こうは家じゃなかったし。何だったのかは入ってないからわからないよ。人?俺以外にはいなかったと思う。並んで?行列が?いや、なかった。あんなところに人が並ぶの?うん、少なくとも後ろにはいなかった。インターホンを押した覚えはないね。あったのかな。表札もあったかどうか。というのもね、おじさんが立ってたの。門のところに。おじさんが。紙持ってて、あー、あの何だ、チェックシートみたいなの持っててね。でね、そのおじさんが「あっ、来たね。いいよ、通って。さ、早く通って。待ってるから。みんな。」みたいなこと言って門の中に入れようとするわけ。あのあれ、シルバー人材の警備の人わかる?要領得ないタイプの。「いやー、こっちも上に言われてるだけだからさー。」って。あんな感じ。ちょうどね。あれ?前にもこんな話したかな。俺?俺ねぇ、なんかこの門やばいかもなぁと思って通らなかったの。何でって?わかんない。本能?おじさん目が笑ってなかったしね。入ったら帰れなくなりそうな予感がしたというか。誰か待たせてる用事もなかったし。おじさん?おじさんは「困るよーちょっと困るんだよーそういうたまに人いるんだよなー。」とかブツブツ言ってたな。え?ううん、無理矢理引っ張ったりはされなかったかな。ブツブツ文句言いながらも別に心から困ってるようには見えなかったし。便宜上そう言ったみたいな。だから、入らないし帰りますって言ってそれで、気付いたらここ。このベッドの上にいたの。どこだったんだろうあれ。痛み?いや、特に痛みとかは……痛ってえ!なにこれ!腕?足?え、折れてんのこれ?痛った、マジこれ痛った!」





きくちそう
寒い寒い言いながら生きてます。
夏よりは冬の方が好きですが、冬になるとやっぱり夏の方が好きかもと思ったりもします。

ありがちなのを二つ書いてみました。ありがちなので、書いていてストレスもなく楽しかったですが、表現力なさも露呈する結果となった気もしています。ふふふ。